開講所属総合管理学部
時間割コード46304401
授業科目名自治行政論
授業科目名(英文)
科目区分パブリック
担当教員澤田 道夫
開講年次2年生
学期・曜日・時限前期 火曜日 5時限
単位数2


概要
 自治行政とは何か、と聞かれたとき、皆さんは何と答えるでしょうか。端的には、自治行政とは「地方自治体が行う行政」といってよいでしょう。しかし、地方自治体と一口に言っても、広域自治体としての「都道府県」や、基礎自治体としての「市町村」など、規模・性格を異にする様々な自治体が存在します。また、それぞれの自治体が行う事業も多岐に渡っており、その全てを「自治行政」の一言でくくることは困難です。それでは自治行政とは、誰を対象にしたどのような行いを指す言葉なのでしょうか。
 この授業では、自治行政という言葉の持つ意味合いと、それが抱える現代的な課題について、理論面と実際面の双方から学びます。
到達目標
1.自治行政という概念の本質と、それがどんな特質を持つかを理解する。
2.様々な現代的な課題に対して、これまでの自治体がどのように対応してきたか、そしてどのような問題が残っているのかを理解する。
3.自治行政を遂行していく上で、住民と行政が互いにどのような立場に立ち、どのような役割を果たしていくべきかについて、自ら考えることができるようになる。
履修上の注意
 この授業は、地方自治に関する基礎的な知識を持つ学生を対象としています。履修前に「地方自治の基礎」を受講しておくことを推奨します(ただし、履修の必須要件ではありません)。
 受講する学生は、県や市町村行政に関心をもち、それぞれ誰を対象にどのような事業を実施しており、どんな特質があるかなどの情報を積極的に収集するとともに、その状況を当たり前のものとして考えず、「なぜそうなっているのか?」ということを常に考えながら授業に望んでください。
授業計画
 授業は以下の内容により行います。ただし、授業の進捗状況やその時々のトピックに応じて内容・順番を変更する場合があります。

第1回 はじめに
 授業の進め方、受講に当たっての留意点、使用する用語などの説明を行います。また、自治行政の持つ近接性・可視性・総合性などのさまざまな特質をあげて、その大要を理解します。

第2回 自治行政とは何か
 この授業で扱う「自治行政」という概念について、それがどのようなものであるのか解説します。まず「自治とは何か?」「行政とは何か?」を考え、それを自治行政の持つ特質と総合することにより、自治行政の概念を理解します。

第3回 自治をめぐる理論(1)自治権はどこから来るのか
 「自治権」をめぐる説について講義します。国家成立以前から自治権は地域に存在していたとする「自治固有説」、自治権は国家から地方へと与えられるとする「自治伝来説」、さらにその二つを調和させる考え方として、憲法の定める範囲で地域の自治が保障されるとする「制度的保障説」を紹介し、こんにちの自治権のあり方を考えます。

第4回 自治を巡る理論(2)政策過程論
 県や市町村の仕事の流れを理解するための「政策過程論」について学びます。問題の発見、政策課題への転換(行政素需要から行政需要へ)、政策形成、政策決定、政策執行、政策評価、評価結果のフィードバックという一連の政策過程の流れを理解し、各ステージにおいて様々なアクターがどのような行動をとるかについて講義します。

第5回 自治を巡る理論(3)地方自治の本旨と補完性の原理
 地方自治の理念を示すものとされる「地方自治の本旨」と「補完性の原理」について講義します。地方自治の本旨とは団体自治と住民自治を指すとされます。補完性の原理とは、小さな主体ができることは自らの判断と責任において行い、その力に限界がある限りにおいて、より広域の主体がそれを行うというものです。この両者を基に、地方自治の理念について学びます。

第6回 地方分権の現在(1)地方創生
 現在各地で進められている地方活性化の取組である「地方創生」について、その概要と背景、地方創生が導入されるまでの流れをまとめるとともに、その効果と課題について検証します。

第7回 地方分権の現在(2)地方分権改革
 近年、盛んに地方分権の推進が唱えられています。しかし、なぜ分権を推し進めなければならないのでしょうか。地方分権推進一括法、三位一体の改革など、これまで進められてきた地方分権改革の内容や範囲、集権と分権の関係、中央と地方との関係などを学ぶことで、自治行政にとっての分権の重要性について理解を深めます。

第8回 地方分権の現在(3)市町村合併
 地方分権の一環として進められた市町村合併について、その歴史を振り返るとともに、平成の大合併について広域行政の必要性や、合併政策の利点と課題について講義します。

第9回 自治体の行財政改革(1)行財政改革の現状
 現在、国・自治体ともに恒常的な財政悪化の状態にあり、その適正化を図ることが改革の中心課題となっています。そのため、行政機関の効率化と財政健全化を図ることを目的とした「行財政改革」が進められています。この行財政改革について、なぜ自治体財政がここまで悪化してしまったのか、その歴史的背景を踏まえて取組の現状を学びます。

第10回 自治体の行財政改革(2)行財政改革とNPM
 行財政改革の一環として、80年代以降、行政にビジネスの視点と市場原理を導入する「ニュー・パブリック・マネジメント」(NPM)と呼ばれる取組が世界各国で進められました。これを踏まえて、現在の自治体における行財政改革の論点を学びます。

第11回 大都市制度の論点
 熊本市は、平成24年4月に政令指定都市に移行しました。この政令指定都市以降は、熊本においては改革・改善と捉えられています。しかし全国的には、大阪都構想等、政令指定都市解体に向けた動きが加速しており、こちらも改革であるという捉え方をされています。このような大都市制度を巡る動きについて、様々な角度から考察します。

第12回 広がる自治の担い手
 従来、自治行政は地方自治体のみが担うものと考えられていました。しかし現在、地域づくり団体やNPO法人、ボランティア団体など、様々な地域の主体が公共分野に積極的に参加するようになっています。「新しい公共」と呼ばれるこのような主体と行政とが「協働」に取り組んでいる事例を通して、自治の担い手の広がりについて学びます。

第13回 まちづくりとコミュニティ
 自治体において協働の取組を推進するための規範的取組として、各地で自治基本条例の制定が進んでいますいます。このような取組の持つ意義と、まちづくりに果たす地域住民の役割を学びます。

第14回 地方議会のあり方
 自治の担い手が広がり、人々が自らの住む地域を意識するにつれて、地方政治に自らの意思を反映させるための取組が広がってきます。現在、このような取組に応えるかたちで、地方議会改革への模索が始まっています。近年注目されている住民による首長・議会への直接請求などについて、その背景を考えます。

第15回 自治行政論のまとめ
 これまでの授業の振り返りを通じて、今後の自治行政のあり方を考えます。
予習・復習
について
 授業の前に、前回の授業の内容のおさらいをしておいてください(授業においても、前回の授業の内容の振り返りを行います)。
使用教材
 資料は必要に応じて配布します。また、授業内容に併せて、自治行政に関する資料をその都度紹介しますので、可能なかぎりそれらにも目を通してください。
参考文献
西尾勝『<a href="http://wwwlib.pu-kumamoto.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=820049"target="_blank">地方分権改革</a>』(行政学叢書5、東京大学出版会、2007)
小泉和重「地方府県の財政危機とその原因」(<a href="http://wwwlib.pu-kumamoto.ac.jp/mylimedio/search/magazine.do?target=local&bibid=2602"target="_blank">アドミニストレーション</a>第7巻2号、熊本県立大学、2000)
荒木昭次郎『協働型自治行政の理念と実際』(敬文堂、2012)
単位認定
の方法
 試験結果を中心に、平常点の内容等により総合的に判断します。なお、指定する課外活動への参加状況等も加算対象とします。
成績評価基準
 到達目標の欄に示した1~3の目標のそれぞれについて、その知識や理解の度合い、考察の内容に応じて評価を行い、成績を付与します。
その他1
・地域志向科目
その他2
参考URL
http://www.pu-kumamoto.ac.jp/~sawada-m/jichigyousei.html