開講所属総合管理学部
時間割コード47162601
授業科目名経済思想
授業科目名(英文)
科目区分ビジネス・アドミニストレーション
担当教員中宮 光隆
開講年次3年生
学期・曜日・時限後期 火曜日 1時限
単位数2


概要
  経済学は、いま、大きな転機を迎えている。もちろん、転機は歴史上幾度もあった。しかし今回のそれは、先進資本主義国における「バブル経済」や長期不況・失業によってこれまた1930年代以来の後世に語り継がれるであろう経済の撹乱を背景にしているだけに、深刻である。しかし議論されている内容には、歴史の進化によってモディファイされているとはいえ、その本質において時代を超越した共通性がみられる。経済ないし経済学の目標は、いつの時代においても、人々の安定した生活の確保と適度な経済成長による幸福の増大であったからである。混沌とした現代こそ、過去を振り返り、歴史に問いかける意義は大きい。本講義では、学問としての経済学の流れを概観し、それぞれの時代に経済学者は何を見、いかなる問題解決策を考えたかを考察し、それらを基礎にして現代経済の諸課題に対するより適切な処方箋を考えたい。
 特に現代経済で注目される論点として、①市場重視か政府の規制も必要とみるか、②実体経済と金融市場の関係をどうみるか、③グローバリゼーションや地域経済統合・自由貿易を推進するか等がある。米国政治の転機とともに、これらの論点に関する世界規模での議論が高まっているし、今後もさらに強まることが予想される。このような激動の時代にこそ、これらの論点を自分なりに理解し考える知識と能力を身につけたい。
到達目標
1.近現代市民社会の仕組みと思想を理解する。
2.経済学体系の黎明期、経済思想家は国富の増加と人々の幸福増大をめざして、どのような議論を展開していたかを理解する。
3.経済恐慌や不況を経験した経済思想家たちは、より安定した経済発展と人々の生活向上のために、どのような処方箋を考え、また論じていたかを理解する。
4.近現代を通じて、持続的経済発展を実現するための議論における対照的な視点―経済を供給面から見るか需要面からみるか、市場に全幅の信頼をおくか政府の規制も必要と考えるか―を理解し、現代経済の課題の発見とその解決方法について考えることができる。
履修上の注意
  本講義は経済学という学問の歴史が対象であり、したがってその内容は理論的である。ただし、そのより深い理解に必要不可欠な限りでの経済(学問ではなく実態)の歴史(人々の経済行動とその諸結果の歴史)に触れることになる。さらに、人々の経済活動における思想や行動、社会や経済の動きに対する価値判断・評価等にも触れることになる。本講義の履修にあたって,事前に履修しておかなければならない科目は特にない。
授業計画
第1回 経済学史の対象と課題、および経済の歴史(変遷)の概観
本講義全体のイントロダクションとして、18世紀から現代にいたる経済の歴史と学問としての経済学の歴史を概観する。あらかじめこれらを鳥瞰しておくことが、爾後の講義内容の理解を深めることになるからである。

第2回 社会科学の成立と経済学体系の生誕を準備した人々
17世紀イギリスにおける市民革命によって生まれた近代市民社会の統治原理とその構成員の行動原理(道徳)は何かを明らかにする。これは、後のアダム・スミスの経済学体系の成立と関係する。この際のポイントは、人間と自然の物質代謝(生産と消費)において労働を重視したことである。

第3回 経済学の黎明。重商主義
  一国の富の増大は、市民社会成立以前からの課題であった。しかし、アダム・スミス以前においては、概してそれは金銀財宝としてとらえられ、外国貿易の黒字によって獲得されると考えられていた。また、絶対王政期の重商主義と市民革命後のそれとの異同も考える。

第4回 経済学の成立に寄与したもう一つの系譜。フランス重商主義と重農主義
フランスに於いても重商主義の考え方が独自に展開された。ジョン・ローの失敗も取り上げる。また、18世紀の重農主義は、農業における生産力、つまり生産過程での富の創造に着目した。

第5回 アダム・スミスの道徳哲学
経済学を最初に体系化した人物として知られるアダム・スミスは、もともと法学者であり、統治や道徳に関して大学で講義をしていた。スミスにおける法学と経済学の密接不可分な関係は、わが総合管理学部に一脈通じている。ここでは第2回目の講義の延長線上にあるスミスの道徳哲学理論を検討する。

第6回 古典派経済学-その1 アダム・スミスの経済学-
ここでは第3回目の講義の延長線上にあるスミスの経済学理論を検討する。彼は、労働が投下される生産過程に注目し、生産力の上昇による富の増大を論じた。

第7回 古典派経済学-その2 リカードウとマルサス-
リカードウはスミスの経済学をさらに理論的に精緻化した。しかし、現実に出現している恐慌については、説得ある論述を展開していない。マルサスはその点でリカードウに対立している。もう一つ、穀物(食料)輸入の是非に関しても、両者の間で論争があった。

第8回 シスモンディとフランス経済学
リカードウを批判して深刻な恐慌への政府の積極的な対応を主張するシスモンディは、同じくリカードウを批判するマルサスとも一線を画し、フランス独自の経済学の伝統の上に論理が構築されている。その独創性がおもしろい。

第9回 19世紀の経済論争-古典恐慌論争 穀物論争 地金・通貨論争-
ここまでの考察のまとめとして、様々なテーマで展開された論争を整理しておく。これは、現代の経済と経済学を理解する上で重要である。

第10回 マルクスの経済学
マルクスの経済学は、ひとりの天才がある日突然まとめ上げられたものではない。全く逆に、前回まで述べた議論の展開の上に打ち立てられたものである。経済学の流れの中でマルクスをいかに位置づけるか、を中心に検討する。

第11回 J.S.ミルと功利主義
功利主義は効用理論を基礎づけるものであり、近・現代経済学の論理的前提である。ここではミルやベンサムの理論に触れつつ、功利主義の特徴を明らかにする。

第12回 限界革命 -限界効用理論の成立-
近・現代経済学の前提としての効用理論を、メンガー、ジェボンズ、ワルラスについて検討する。

第13回 マーシャルとケインズ
新古典派のマーシャルは、市場メカニズムを重視しレッセフェールを主張する。他方ケインズはマーシャルを批判して、政府による経済への積極的な介入を主張する。大恐慌期の大量の失業に対して、ケインズはいかなる処方箋を準備したのか。

第14回 ケインジアンとマネタリスト
1930年代、とくに第2次大戦以降先進各国で一世を風靡したケインズ政策は、1960年代のインフレーションと1970年代のスタグフレーションに対して無力であった。替わって強い影響力を持ったのが、マネタリストとサプライサイダーの経済学であった。その反ケインズ的性格は、市場メカニズムと競争の重視という点に端的に表れている。

第15回 経済学の歴史は現代に何を語りかけているか
およそ2世紀と4分の1の間にわたる学問としての経済学の歴史からわれわれが学ぶものは何か。現代経済の諸課題と経済学の歴史の関係を考える。
予習・復習
について
1. 事前にレジュメを配布するので、目を通しておく。
2. 講義レジュメに取り上げられている経済学者について、図書館で関係する文献を検索し、興味のある文献、とくに各経済学者の著作をよく読む。
使用教材
講義の際(事前に)レジュメのプリントを配布する。
参考文献
『<a href="http://wwwlib.pu-kumamoto.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=766828"target="_blank">経済思想</a>』(全11巻)日本経済評論社,2005-2006年。(本学図書館に所蔵)
その他は講義の際,紹介する。

単位認定
の方法
試験100%。
成績評価基準
到達目標(4点)のすべてを達成し、かつ講義内容に加えて自学自習の成果が見られる。―秀
到達目標(4点)のすべてを達成している。-優
到達目標の75%程度以上を達成しているか、または全体についておおよそ理解している。―良
到達目標の50%程度以上を達成しているか、またはその75%程度をおおよそ理解している。―可
「可」の水準に達していない。-不可
その他1
その他2
参考URL