開講所属総合管理学部
時間割コード47181601
授業科目名参加・協働論
授業科目名(英文)Participation and Collaboration
科目区分パブリック・アドミニストレーション
担当教員澤田 道夫
開講年次3年生
学期・曜日・時限後期 火曜日 5時限
単位数2


概要
 参加・協働は、人と人との相互作用を通して社会の目標を達成していくシステムです。国や県、市町村などが行う様々な行政活動に人びとが参加し、行政と力を合わせていくことで、より良い地域を作り上げていくことが可能となります。
 近年の景気悪化と行財政改革の流れの中で、行政が使用できる予算や人員は縮小の一途をたどっています。参加と協働は、このような社会情勢を背景として、いまや全国の自治体の政策における中心的な理念となっています。しかし、協働の取組を積極的に進めている自治体においても、必ずしもその概念や意義がきちんと理解されてはいないようです。いずれにせよ、これから公務員を志す人、あるいは地方自治について深く学びたい人にとっては、協働の概念を正しく理解することが必要不可欠でしょう。
 この授業では「参加から協働への発展」と「社会環境の変化」の関係や、「垂直的分権による協働」と「水平的分権による協働」の違いなどを学ぶことで、参加と協働の持つ意義と、協働を進めるための条件について理解を深めることを目標とします。
到達目標
1.協働という概念について、その字義的な意味合いと、それを構成する主要な要件を理解する。
2.参加・協働論がどのように生まれ、どのように発展してきたか、その経緯について理解する。
3.協働概念を理解するための様々な理論について学ぶ。
4.これからの協働型自治行政のあり方について、自ら考えることができるようになる。
履修上の注意
 この授業は、地方自治に関する基本的な知識を持つ学生を対象としています。履修前に「自治行政論」を受講しておくことを推奨します(ただし、履修の必須要件ではありません)。
 全国の自治体が行う「協働のまちづくり」の状況は、日々新聞やニュース等で報道されています。受講する学生は、そういった報道について、どんな内容の協働政策なのか、どのような団体が協働を行っているか等の情報を積極的に収集するとともに、何故そのような取り組みが行われているのか、どのような効果が見込まれどのような課題が存在するのかなど、常に問題意識を持って授業に望んでください。
授業計画
 授業は以下の内容により行います。ただし、授業の進捗状況やその時々のトピックに応じて内容・順番を変更する場合があります。

第1回 はじめに
授業の進め方、受講に当たっての留意点、使用する用語などの説明を行います。また、現在様々な自治体で行われている協働のまちづくりについて概要を紹介し、参加と協働に関するイメージを共有します。

第2回 行政と住民との協働
 これからの授業の流れを理解しやすいものとするために、協働とは何か、なぜそれが注目されているのかについて、そのあらましを講義します。

第3回 協働とは何か
 この授業の中心となる「協働」という概念について、それがどのようなものであるのか解説します。協働が持つ「目標の共有」・「複数の主体」・「対等な関係」などの特質を取り上げ、説明しながら、その概念への理解を深めます。

第4回 参加から協働へ(1)住民運動から住民参加へ
 参加・協働論の発展の流れを2回に分けて講義します。まず、参加の出発点となった住民運動について、その時代背景と住民運動の意義、政策形成過程への住民意思の反映の重要性について講義します。そして、社会環境の変化に伴い、要求・要望型の住民運動が公共的な利益実現のための住民参加に移っていく変化の過程を理解します。

第5回 参加から協働へ(2)社会の成熟化と協働
 住民参加が協働へと発展していった社会的な背景について講義します。人びとが地域で協力・連携する意識を高め、活動するようになるためには、一定地域に住み続ける「定住性の確保」などの社会的条件が必要になります。さらに、会社人間から地域社会人間への変化、自由時間の増加、高学歴化などの社会の成熟化が協働の条件になることを学びます。

第6回 協働を担う主体と「新しい公共」
 様々な自治体において、公共サービスが行政と住民との協働により提供されるようになってきています。それでは、公共サービスはどのような主体により提供されているのでしょうか。公的性と私的性、従来型と新しい主体のそれぞれの分類軸において、協働を担う主体に関する理解を深めます。

第7回 協働の事例
 各地で行われている協働の取組には、どのような事例があるのでしょうか。その具体的なイメージについて、様々な事例を取り上げて理解を深めます。

第8回 協働の理論(1)市民参加の階梯
 協働をより深く理解するために必要な様々な理論について講義します。現在、地域づくりや福祉など、従来行政が行ってきた分野に積極的に参加する人々が増えています。このような流れについて、心理学者マズローの「欲求階層説」と、それをもとにした社会学者アーンスタインの「市民参加の階梯」などに基づいて、民主性の観点から学びます。

第9回 協働の理論(2)Co-production
 社会学者オストロムが構想したコ・プロダクション(Co-production)の理論を紹介します。オストロムは、公共経済学者フクスの「財やサービスを生産する過程において、正規生産者だけで生産するよりも、その過程に消費者生産者を関わらせた方が生産性は向上する」という生産性向上理論に関する研究にヒントを得て、Co-productionという概念を唱えました。この概念をもとに、協働を効率性の観点から学びます。

第10回 垂直的分権と水平的分権
 現在、各地で協働の取組が進められていますが、その背景にある考え方は、大きく「垂直的分権による協働」と「水平的分権による協働」の二種類に分かれています。垂直的分権とは中央・地方間関係に代表される上下関係での分権、また水平的分権とは、参加者がお互いに負担を分け合い協力していく対等な立場での分権です。この二つのそれぞれの特徴と相違点について講義します。

第11回 垂直的分権概念に基づく協働
 垂直的分権の概念に基づく協働として、現在、国や自治体において進められている様々な制度や取組について紹介します。そして、垂直的分権に基づく協働について、行政側の協働に対する「お墨付き」「下請け」などの見方や、住民側の行政に対する「打出の小槌」意識など、協働を進めるうえで生じる様々な問題点を考えます。

第12回 協働の可能性
 垂直的分権による協働の背景には、住民が正しい判断をすることが可能なのかという行政側の懸念があります。はたして住民は正しい判断をする主体となり得るのでしょうか。政治学者リンドブロムの「民主主義の潜在的知性」や経済学者ウィットマンの政治経済学理論に基づいて、協働の主体としての住民について考えます。

第13回 水平的分権概念に基づく協働
 これからの協働には水平的分権の概念が欠かせません。しかし、水平的分権による協働を推進するためには、様々な条件が必要となります。その一つが、対等な主体間の信頼と協力のネットワークの構築です。政治学者パットナムの「ソーシャル・キャピタル」の理論をもとに、協働の条件を学びます。

第14回 協働と市民社会
 協働を進めるもう一つの条件として、住民の側の問題があります。水平的分権による協働を進めるうえでは、住民もまた協働を担う主体として力を付けていく必要があります。このようなエンパワーメントについて、「自律した市民」という概念をもとに学びます。

第15回 参加・協働論のまとめ
 現在、全国の自治体で協働の導入が進められていますが、それは何故でしょうか。これまでの授業の内容を振り返り、これからの協働のあり方について考えます。
予習・復習
について
 授業の前に、前回の授業の内容のおさらいをしておいてください(授業においても、前回の授業の内容の振り返りを行います)。
使用教材
 資料は必要に応じて配布します。また、授業内容に併せて、協働に関する資料をその都度紹介しますので、可能なかぎりそれらにも目を通してください。
参考文献
荒木昭次郎・澤田道夫ほか『現代自治行政学の基礎理論』(成文堂、2012)
荒木昭次郎『協働型自治行政の理念と実際』(敬文堂、2012)
荒木昭次郎『<a href="http://wwwlib.pu-kumamoto.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=582749"target="_blank">参加と協働</a>』(ぎょうせい、1990) ※絶版になっていますので図書館で借りて目を通してください。
R.D.パットナム『<a href="http://wwwlib.pu-kumamoto.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=663885"target="_blank">哲学する民主主義』</a>(河田潤一訳、NTT 出版、2001)
単位認定
の方法
 試験結果を中心に、平常点の内容等により総合的に判断します。なお、指定する課外活動への参加状況等も加算対象とします。
成績評価基準
 到達目標の欄に示した1~4の目標のそれぞれについて、その知識や理解の度合い、考察の内容に応じて評価を行い、成績を付与します。
その他1
・地域志向科目
・地方創生科目
その他2
参考URL
http://www.pu-kumamoto.ac.jp/~sawada-m/kyoudou.html