研究室の紹介

沿革

大気環境学研究室(張研究室)は,平成11年4月の環境共生学部発足と共に設立されました.東アジア大気環境を中心に,様々な問題・現象を物理・化学・生物的な側面から研究しています.

平成23年度からは熊本大学理学研究科の小島知子准教授の研究室と週一回の合同セミナーや天草観測,中国訪問などを一緒に行っており,大気環境学研究の「チーム熊本」として楽しく研究を進めています.

現在の研究テーマ

  1. 電子顕微鏡によるエアロゾル粒子の解析
  2. 空気中に浮遊する粒子(エアロゾル)の一粒一粒を電子顕微鏡で観察・解析し,ミクロな視点からの浮遊粒子の分布や輸送,変質,さらには地球化学的な意味について考察を進めます.本研究室の伝統的技術でもあり,これまでにも黄砂,自動車排気ガス,雲などへの応用で数多くの問題・謎を解明してきました.

  3. 空気中汚染物質および粒子状物質の動態解析(濃度,組成,放射特性など)
  4. 気象データと大気中物質の特性を解析することで,光化学スモッグやアジア大陸からの黄砂・汚染輸送などの大気環境問題の原因やメカニズム,性状について明らかにします.後述する天草大気観測リサーチユニットでのモニタリングデータや係留気球観測が特色です.

  5. バイオエアロゾル研究手法の開拓および観測
  6. バイオエアロゾルとは,微生物や動植物の破片などの,生物を起源とするエアロゾルの総称です.バイオエアロゾルが我々の生活や地球環境に与える影響について近年関心が寄せられるようになった一方で,未だにその研究方法は確立されていません.そこで,バイオエアロゾルの研究手法の検討を行いながら,バイオエアロゾルの実態解明に先駆的に取り組んでいます.

  7. 大気中浮遊粒子状物質のDNA損傷能の評価
  8. 大気中粒子状物質の健康影響評価のために,DNAへの損傷能をin vitroで定量化する手法を用いて観測を行っています。中国鉱業大学のShao教授のグループと協力して実施しています。

この他にも,過去にはコンピュータシミュレーションを用いた大気や海の物質循環の研究も行っていたことがあります.
本研究室のバラエティーに富んだ研究内容は過去の卒業論文・修士論文・博士論文の一覧からもご覧いただけます.

大気環境学研究室

左:チベット高原での大気中浮遊粒子の採集,中央:観測気球,右:天草環境リサーチラボ

大気環境学研究室

左:硫酸粒子,中央:硫酸アンモニウム粒子,右:すす粒子

設備

本研究室は電子顕微鏡,蛍光顕微鏡をはじめ,微生物実験用のクリーンベンチや高速遠心分離器など多彩な設備が揃っています.

大気環境学研究室

天草環境リサーチユニット (AERU)

本研究室は天草環境リサーチユニット(Amakusa Environmental Research Unit; AERU)を天草市天草町大江に設置し,他大学と協力して様々な観測機器を設置して大気の観測を行っています.天草の「九州の西海岸部で都市由来の汚染物質による影響が少ない」という地理を活かし,九州における東アジア大気環境の高分解能観測拠点をつくることを目的としています.現在,以下の機器を設置しています.

aeru

【上段】AERUの協力グループと設置地点
【下段】左:AERUプレハブ,中央:プレハブ内部,右:シーロメータ

AERU設置機器

  • 気象計(WXT520, Vaisala製)
  • 気温,湿度,気圧,降水量,風速,風向を測定します.
  • 光散乱式粒子計数装置(OPC; KC01D, RION製)
  • エアロゾル粒子の数濃度をサイズ別に計測する装置.空気を吸い込んで,レーザー光によって粒子数を測定します.
  • シーロメータ(CT25K, Vaisala製,名古屋大)
  • 地上から上空約1000 m前後までのエアロゾル粒子の分布を計測する装置.レーザー光を上空に照射して,ほぼリアルタイムで大気中エアロゾル粒子の鉛直分布を測定しています.
  • NOx計(Model 42C, Thermo Fisher Scientific製)
  • 空気中の窒素酸化物(NOx)をモリブデン触媒で一酸化窒素(NO)に変換し,そのNOの濃度を測定します.NOが酸化されるときに生じる化学発光が測定原理として用いられています.
  • 硝酸塩計(Model 42C, Thermo Fisher Scientific製,大阪府立大)
  • 上記NOx計と同じ装置にフィルターやデニューダを組み込んだ分析ラインでNOx濃度を計測し,それぞれの測定値の差し引きで空気中硝酸塩濃度を求めます.
  • SO2計(Model 43x,Thermo Fisher Scientific製)
  • 二酸化硫黄(SO2)濃度を計測します.SO2が紫外線を照射されると230-410 nm波長の蛍光を発する性質を測定に利用します.
  • 硫酸塩計(Model 5020 SPA,Thermo Fisher Scientific製,熊本大)
  • 空気中の硫黄酸化物(SOx)を1000°Cで熱してSO2に変換し,上記SO2計と同じ原理でSO2濃度を測定します.フィルターでろ過された空気と無ろ過の空気とを交互に分析してその測定値の差し引きで空気中硫酸塩濃度を求めます.
  • CO計(Model 48C, Thermo Fisher Scientific製)
  • 一酸化炭素(CO)濃度を計測します.CO2が赤外線を吸収する性質を利用します.
  • オゾン計(Model 49C, Thermo Fisher Scientific製)
  • 光化学オキシダントの主成分であるオゾンを測定しています.オゾンが紫外線を吸収する性質を利用して計測を行います.
  • エサロメーター(Aethalometer AE41, Magee Scientific製)
  • フィルター上に空気中浮遊粒子を捕集し,6波長の可視光線をあてて,浮遊粒子の吸光特性を測定しています.これを利用して,空気中のブラックカーボン(すすなどの黒色の浮遊粒子状物質)濃度を測定しています.
  • 放射計(Kipp & Zonen製他,東北大)
  • 全天日射量,紫外線,赤外線を測定しています.
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