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木村 洋(KIMURA, Hiroshi)

【メッセージ】
 私の研究には大きく二つの柱があります。

 一つは、『小説神髄』(1885-86)以後数年間に顕在化する文運隆盛についての研究です。この展開のなかで、いわゆる「紅露逍鴎」(紅葉、露伴、逍遙、鴎外)の活躍が始まり、大胆かつ実験的な試みが次々と現れました。さらに、自由民権運動後に生まれた新しい言論活動(たとえば徳富蘇峰主宰の雑誌『国民之友』の刊行)、あるいは、政治から文学へという青年層の関心の転換(たとえば透谷や独歩)も重要です。一連の展開がいかなる表現を生み出し、いかなる歴史的転換をもたらしたのか。この点を調査していきたいと思います。

 もう一つは、1900年代における高山樗牛の批評活動から自然主義運動へという流れについての研究です。この流れを一貫して特徴づけるのは、青年層と年長世代のあいだの思想的対立です。このなかで文学は、青年層の新しい連帯を社会に確立するための媒体として、固有の社会的機能をもつに至ります。別の側面から言えば、この動きは、先に述べた『小説神髄』以後の文学革新が最終的に何をもたらしたかを示したものと言えます。この歴史的展開は十分に明らかになっておらず、さらなる考究に努めたいと思います。




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「国民之友」101号表紙

 その他、文学作品に限らず、史論、人物論、宗教家の著作、社会運動家のルポルタージュなど、文学作品とは言えないものも取り上げていきたいと思います。たとえば内村鑑三の北米滞在記や徳富蘇峰の人物評論など冒険的な対象についても、いつか論文を書きたいと考えています。日本近代文学という果てのない沃野を踏査する楽しさをぜひ皆さんにも体験してほしいと思っています。