五和歴史民俗資料館

 五和歴史民俗資料館は、天草市五和町の通詞島にある。
 高台に位置し、眼下には藍色に輝く有明の海と、天草・島原の乱の舞台となった湯島(談合島)や原城跡を臨むことができる。この海が、豊饒の海である有明海唯一の入口であるそうで、そのことが歴史に与えてきた影響は大きいとのこと。往年の歴史を見つめてきた場所に、この資料館は建っている。

 「通詞島」という名前の由来は、古来漁業が盛んだったこの地域の人々が遠く東アジア各国まで漁に出掛け、現地の人々との交流を通じて、多くの言語を獲得したことにちなんでいるそうだ。
 この地域で漁業が盛んであったことも、他地方との交流が盛んであったことも、資料館の貴重な展示品が教えてくれる。


 展示品の多くは、沖の原遺跡からの出土品である。注目すべきは、棺に入れられることなく抱き石を胸に抱いた格好で埋葬された縄文人の骨が見つかっていることや、他の地域では見ることができない長い”脚”が特徴の天草式製塩土器の復元がなされていることである。
また、同じ形をした石が多く見つかっており、それがアワビを採取する際に利用された漁具だということが推測されている。

 その漁具の出土の多さからも、アワビがこの地域の特産物であったことは分かる。また、遺跡出土品以外にも、多種多様な江戸時代の漁具が展示されている。

 今回、この資料館を訪れた目的は、天草古代の歴史を知ることはもちろん、もう一つ『天草里言』という文献の調査の一環でもあった。

>>>『天草里言』について


資料館の方々が、お忙しい中にもかかわらず、心尽くしの歓待をしてくださった。
親切な解説、一人一人に配られた「宝島上陸証明書」から、職員の皆様の熱心な姿勢が伝わってきた。
貴重な展示物を見ることができたのはもちろんだが、このような素晴らしい資料館に出会うことができて良かった。


 資料館を囲む海では、世界的にも珍しいことに、年中イルカが泳ぎまわっている。

 一度訪れてみることをおすすめする。