お知らせ

News
  1. 熊本県立大学ホーム
  2. お知らせ
  3. 【広報特集】総合管理学部に専攻制を導入

【広報特集】総合管理学部に専攻制を導入

※記事の内容は2023年9月時点です。専攻名や科目名等は変更される場合があります。

創設30年を迎えた総合管理学部

専攻制導入で新たな一歩
時代のニーズを見据え より深く、より広く探究

 1994年4月に熊本県立大学が熊本女子大学から名称を変更し、共学化と総合管理学部をスタートさせて来年で30年を迎えます。総合管理学部は、地域社会に根づいた学部として社会の諸課題を幅広く総合的に学び、実践的に解決する力を付ける教育を行ってきました。その成果によって、地域に貢献できる多くの人材を輩出してきました。

 「諸学を総合的に学び、全体的マネジメントの資質を高めるのが当初の創設の目的でした。しかし学生アンケートでは、こうした学びへの理解や満足度が高い一方で、“もっと専門的に学びたかった”という意見もありました」と話すのは、澤田道夫総合管理学部長です。

 また、この30年で社会環境は大きく変化しました。少子高齢化や過疎化、格差拡大、グローバル化、DX対応など、地域が直面する諸課題は非常に多様化・複雑化。より専門性の高いスキルを持つ人材が必要になってきました。

 こうした背景から、総合管理学部は創設30周年を機に専攻制の導入を決定。2024年4月より、現行の1学科(総合管理学科)を発展させ、学科のもとに「公共専攻」「ビジネス専攻」「情報専攻」の3専攻を設けます。1年次はさまざまな分野を学び、2年次から各専攻に分かれることになります。総合管理学部では過去にもカリキュラムの変更を実施しましたが、今回のような大きな改組は初めて。「専攻制を導入することで、総合的な学びを維持しつつ、専門性を高めて現代社会の課題解決を実現できる人材育成を図りたい」と、澤田学部長は語ります。

総合管理学部 澤田 道夫 学部長

 では、それぞれの専攻にはどのような特徴や、期待する学生像があるのでしょうか。各専攻の先生の話を交えながら紹介します。

公共専攻 ~政治学や法学の視点で学ぶ~

これからの公務員や一般市民に求められる行政、法律、政策、福祉等の知識を学び、協働的に社会的諸課題を解決する

新設科目(予定) 「参加協働論」「政策実践論」 等

専門的な知識をベースに、地域を見つめる

 基礎として政治学や法学を中心に学び、まちづくりや福祉、SDGsなどの観点から、私たちが暮らす世界(公共社会)のあり方を考えていくのが「公共専攻」の理念です。この専攻の目的は、行政や法律、政策、福祉などの知識を基に、学際的に社会の諸課題を解決できる人材を養成すること。地域づくりにも多くのアプローチがあります。特産品を売りたければ、マーケティングや経営戦略といったビジネスのスキルが必要ですし、地域を良くしたいと考えれば政策について深く学ぶ必要があります。AIやアプリを使った情報環境整備を考える学生もいるかもしれません。

 1年次には、さまざまな分野について総合的に学びますが、2年進級時に公共専攻を選んだ学生は、「民法」「公共政策論」「福祉政策論」「政策実践論」などの公共系の展開科目から、興味や関心に応じて選択します。科目については、今起きている社会問題に速やかに対応できるよう、特化し過ぎた科目名称を一般化するなどして整理。「少子高齢化やグローバル化、デジタル化などの現代的事象に合わせて授業の中身を変えることで、より専門的に学びやすくしました」と総合管理学部公共・福祉部門長の上拂耕生教授は話します。教員は、学生のニーズにも社会のニーズにも応えられる質の高い授業を目指します。

公務員やNPOに必要な実践力、対話力を養う

 「公共」という言葉が、「自治体」をイメージさせるのか、入学時には公務員を志望している学生が多いという総合管理学部。ただ、本学部では1年次にさまざまな分野を学んで自分の可能性を広げられるため、実際には公務員以外の進路を選択する学生も多くいます。

 少子高齢化、若者の貧困、国際人権、ダイバーシティなど、現代社会にはより専門性が必要な問題が山積しています。国や自治体の政策も、時代によって変化します。「社会が多様化・複雑化する中で、公共の分野で働く人は課される使命が大きいのです」と語る上拂教授。公共に携わる人材には、法律や政策、政治、福祉などの専門知識を持つだけでなく、より高い実践力や対話力、説明力が求められます。

 総合管理学部では、熊本県内の自治体や地域のNPO、まちづくり会社などと連携した実践演習を行っており、公共専攻でも熊本市や水俣市などと一緒に課題解決に向けて活動しているゼミがあります。学生はこうした活動に積極的に取り組むことで、地域に貢献できる人材となるべく、より実践的なスキルを学ぶことになります。

 

バイタリティ溢れる学生を待っています!

 「昔は、ただ生活のためにお金を稼ぐという働き方が多かったですが、今は“何のために、どう働くか”という価値観で職業を選びます。しかも、言われたことだけをやるならAIがやってくれる時代。ベースとなる法学や政治学の知識だけでなく、多様化・複雑化する社会に貢献できるように、コミュニケーション能力などを鍛えるのも公共専攻の学びのひとつですね」と上拂教授。演習やゼミでは実践力が問われます。多少の困難にもへこたれない、元気な学生を求む!

総合管理学部 公共・福祉部門長
上拂 耕生 教授

ビジネス専攻 ~軸足を経済や経営の領域に~

経済学や経営学の分野に軸を置きながら、多様なフィールドを多角的・学際的に捉え、イノベーティブに社会的諸課題を解決する

新設科目(予定) 「アントレプレナーシップ(起業論)」「ベンチャービジネス論」 等

社会や価値観の変化に応じた新しい科目も

 専攻制を導入するにあたり、ビジネスの分野では科目の見直しを図りました。「経営学や会計学も、ベースには経済学があると考えます」と話すのは、総合管理学部ビジネス部門長の望月信幸教授です。基礎中の基礎と言える「経済学」は、総合管理学部の必修科目。2年次からのビジネス専攻では、「マーケティング」「経営組織論」「管理会計論」「ビジネスデータ分析」など、経営やビジネスの色を出した展開科目を用意しています。

 これまで総合管理学部では、起業やベンチャービジネスといった「自分主導の経営」について深く学ぶ機会がそれほどありませんでした。しかし、今や学生の起業が珍しくなくなりつつあります。こうした価値観や時代の変化に伴い、3年次には「アントレプレナーシップ(起業論)」と「ベンチャービジネス論」を新設。新たに実務スキルのある専門講師を招いて、PBL型(課題解決型)の授業を行う予定です。起業やベンチャービジネスに興味のある学生は、より実践的・実務的なスキルを養うことができます。

 熊本県立大学には地域・研究連携センターがあり、こうした科目が加わることで、近い将来、学内ベンチャーを立ち上げて企業や自治体の課題を解決することが可能になるかもしれません。

ビジネスの視点が道しるべになる

 デジタル社会では、例えば簿記の仕訳などテクニカルな知識より、「その数字がどうやって出てくるかを理解し、その数字をどう使うか」といった分析力が重要になってきました。さらに、こうした数字も「情報」の分野と密接につながったり、行政や法律、福祉など「公共」の分野と大きく関わったりすることが多々あります。ビジネス専攻では、経済や経営、会計の視点から、他の分野との関わりを考え、多角的・学際的に課題を解決していく能力を高めていきます。

 総合管理学部の卒業生の多くは地域産業に携わり、マルチプレーヤーとして活躍しています。「しかし、多くの学びを得られるのに、“何を中心に学んだか”という自分の立ち位置がはっきりせずに悩む学生もいました。専攻制になることで、彼らの意識の持ち方が変わることを期待します」と望月教授。柔軟な対応ができる人材を輩出してきた総合管理学部の良さを残しつつ、時代の変化に伴って授業内容を変え、専門知識やスキルをより深められる学びの場として学生に道しるべを示していきます。

 

「大学で何を学んだか」を明確に

 就職の面接などで「総合管理学部って何? どんなことを学んできたの?」と質問される卒業生が多かったのではないでしょうか。「幅広く、いろいろなものを身につけられるのが総合管理学部の良さですが、進路をはっきり決めらない学生が多かったんです。興味を持って学び、もし迷子になったときにどこへ戻ってくればいいか分かるように、自分の軸の置き場所をはっきりさせること。それが専攻制導入の一番のコンセプトですね」と、望月教授は学生目線で語りました。

総合管理学部 ビジネス部門長
望月 信幸 教授

情報専攻 ~クリエイティブに課題を解決~

情報による社会的価値の創造を中心に据え、情報の原理と技術を社会の各分野に応用し、クリエイティブに社会的諸課題を解決する

新設科目(予定) 「情報イノベーション学」「サイバーフィジカルシステム」 等

知的好奇心を持ち続けてアイデアを生む

 「少子高齢化や過疎化といった課題や、グローバル企業進出などの機会に対応するため、情報技術やデータサイエンスを基盤としたDX化、グローバル化を推進できる人材を育成していきたい」と、総合管理学部情報部門長の森山賀文教授は情報専攻の教育目的を語ります。

 情報系の科目では、「情報処理」と「データサイエンス」を全学部の必修としています。また2024年度からは、総合管理学部の必修科目として1年次に「情報イノベーション学」を新設。2年次以降は、基盤となる情報技術や「プログラミング」を段階的に学ぶほか、「自然言語処理」「サイバーフィジカルシステム」など、より専門性の高い展開科目がそろいます。

 「特に情報の分野では知識やスキルの代謝が早く、常に知的探究心を持って学び続けなければなりません」と森山教授。授業で習っていないことにも、学生がどんどんチャレンジしていける仕組みが必要になります。そこで注目されるのが、専攻制導入にあわせて整備される予約システム型の「スマートラーニングコモンズ」。情報の分野に特化した自主学習室で、授業やゼミはもちろん、学生のグループで利用できるよう準備を進めています。3Dスキャナや3Dプリンタ、センサを活用したロボットのほか、プロジェクタやドローンなどの機材を備えて、ハード面から教育環境をバックアップ。学生が自主的に集まってアイデアを創発できるような空間を目指します。

情報という軸足から各分野へ応用する

 モノと情報、社会と情報、人と情報など、情報の分野は工学的なものから社会学的なものまで非常に幅があります。こうした幅広さも、この分野の面白いところ。2年次の後半には各自が興味のあるゼミに所属し、知識とスキルを深めていきます。森山教授は、「情報の分野に限ったことではありませんが、それぞれが長所や好奇心を生かし、チームで取り組むことが、より良い課題解決策を見つける近道になる」と話します。

 2024年度からは、文部科学省の「地域活性化人材育成事業~SPARC~」によって、熊本大学、東海大学と連携を図り、各自の大学には無い半導体関連やデータサイエンスなど特色のある科目も相互にオンラインで履修できるようになります。多種多様で複雑化し、激しく変動する現代社会。情報専攻では、新たなアイデアを生み、地域の諸課題をクリエイティブに解決できる人材の育成が期待されます。

 

学生に期待するのはチーム力とこの3つ

 「一人でできることは限られます。例えばアプリを開発する場合、プログラミングが得意な学生だけでなく、デザインが好きな学生、社会問題に興味のある学生など、多様な学生の長所を活かすことが必要なんですよね」と、例え話で課題解決の核心を突いた森山教授。「現場で現物を見て現実を知り、問の質を高め、学際的に修得した総合管理の知識を活かして、情報による社会的価値創造を牽引できるようになってほしい」と、学生への期待を語りました。

総合管理学部 情報部門長
森山 賀文 教授

お問い合わせ先

事務局 企画調整室

FAX:096-384-6765