【タイ便りvol.7】
アドミニストレーション研究科博士前期課程2年
中島悠聖
タイでの1年間の派遣を終え、日本に帰国してから1か月が経ちました。この1か月は、自分を見つめ直す時間が増え、改めて派遣期間の経験が自分にどれほど大きな影響を与えたかを感じています。出発前は「海外での活動を通して少しでも現地の役に立ちたい」と意気込んでいましたが、振り返ってみると、むしろ私自身が多くのことを教えられ、成長させてもらった1年だったと実感しています。派遣当初は、言葉の壁や文化の違いに戸惑い、思い描いていた活動がなかなか進まない日々が続きました。授業で伝えたい内容が十分に理解されなかったり、計画していたイベントが急に変更になったりと、思い通りにいかないことばかりでした。しかし、そうした中で学んだのは、「相手を変えようとする前に、まず自分が柔軟になること」の大切さです。完璧にやろうとするよりも、その場に合わせて臨機応変に対応し、相手の立場や考え方を尊重することで、次第に協力してくれる人が増えていきました。
活動を通して、特に意識が変わったのは「人との関わり方」です。タイの人々は、人とのつながりを何より大切にしており、笑顔や挨拶一つでも関係が温かくなります。初めのうちは結果を出すことばかり考えていましたが、現地の先生や生徒と日々を重ねるうちに、「一緒に過ごす時間そのものが信頼を育てる」ということに気づきました。結果よりも過程を大切にする価値観は、今の私の行動の基礎になっています。帰国後の生活では、以前よりも周囲の人や出来事に対して寛容に向き合えるようになりました。思い通りにいかない場面でも、「焦らず、今できることをやろう」と自然に考えられるようになったのは、タイで培った柔軟さのおかげだと思います。また、タイで出会った人たちとは今も定期的に連絡を取り合っています。現地の先生方や生徒、そして他の協力隊員から電話をもらい、近況を聞くたびに心が温かくなります。遠く離れていても互いを思い合える関係が続いていることは、私にとって大きな励みであり、活動の成果が今も形として残っているように感じます。電話越しの会話から、現地の学校で新しい取り組みが始まったことを知ると、自分の経験が少しでもその一助になっているのではないかと嬉しく思います。
今後は、タイで得た経験や考え方を日本での生活や仕事にも活かしていきたいと考えています。異なる価値観を持つ人と協力しながら目標を達成する力、そして何より、人との関係を大切にしながら前向きに取り組む姿勢を忘れずに歩んでいきたいです。海外での1年間は終わりましたが、学びは今も続いています。これからもタイでのつながりを大切にしながら、自分の成長を重ねていきたいと思います。


バンコクまで送ってくださった。