令和7年(2025年)11月12日(水)、共通科目「新熊本学:ことば、表現、歴史」の特別講義を本学講義棟2号館中講義室2で開催しました。
講師は、本学客員教授であり、元熊本日日新聞編集長や新聞博物館館長を歴任された平野有益先生です。今回は、「熊本のコメと農業 ~温暖化に揺れる変化と革新」をテーマに、40年以上にわたる新聞記者としての経験や知見を基に、熊本の農業が直面している課課題と、未来に向けた新たな動きについて御講義いただきました。

まず、「令和の米騒動」と呼ばれる米不足や価格高騰の背景について、生産見込みの違いや需要供給のバランスという視点から解説されました。かつての食糧管理制度や、1995年の「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(略称:食糧法)」施行を経て民間流通が中心となった現在の市場構造の変化を振り返りつつ、消費者と生産者の双方が納得できる価格形成の難しさを指摘されました。
さらに、社会構造の大きな変容についても言及されました。かつては国民の8割が農村に住んでいた時代もありましたが、現在はその8割が都市部の「消費側」に回っています。一人あたりの米の年間消費量も、かつての約120kgから50kg以下にまで激減しており、若者の農業への関心の希薄化や、担い手の高齢化が深刻な課題として挙げられました。
猛暑による米の品質低下や、干害・大雨といった気象災害が農業に与える危機についても具体的に説明いただくとともに、暑さに強い品種の開発や、最新技術の導入、企業の農業参入、さらには「二期作」への挑戦といった熊本県内での革新的な取り組みも紹介されました。
講義を通じて、「農業は単なる作物を生産する手段だけではなく、そこに農家が住んでいるからこそ美しい風景や地域文化を守る基盤となっている」ことを強調され、最後に、日常の食を支える農業を「自分たちの問題」として捉え、関心を持ち続けることの大切さについて語っていただき、講義を締めくくられました。
