熊本大学・東海大学と協力・連携 世界に羽ばたく人材を

5年目迎えるSPARC(地域活性化人材育成事業)
熊本県立大学では、地域社会に貢献できる人材の育成や地域活性化を目的とする文部科学省の「SPARC(地域活性化人材育成事業)」に参画し、令和4年度から6カ年計画で事業を推進しています。近年、熊本県では世界的な半導体企業の進出で、グローバル化や地域産業の活性化への期待が高まっています。県立大学は熊本大学・東海大学と協力・連携し、世界に羽ばたく人材の輩出を目的として、多様な取り組みを展開しています。
現在5年目を迎え、各大学の得意とする科目の相互提供を行うことで、より高度な講義を提供しています。昨年、最先端技術を集めたSLC(スマートラーニングコモンズ)を県立大学内に創設。学生たちの自主的な研究を支援し、斬新なアイデアや情報技術で社会をリードする基盤が整い、次へのステップを歩み始めました。



アイデアをホンモノに!最先端な共有空間(スマートコモンズ)で学生が自主的に研究
SLC(SMART LEARNING COMMONS、スマートラーニングコモンズ)
SPARCの拠点施設で、講義室を2部屋くっつけたほどの広さのSLC。令和4年度に創設された部屋は現在、総合管理学部の講義や自主ゼミ、イベントなどで利用されている。SPARC事務局の日比野友博特任講師に案内してもらった。学生の自主的な研究拠点ではあるが、「高価な機材が多いため、利用にはSPARC事務局への申請が必要」。
ここに集う学生たちの斬新なアイデアが、最先端の機器を駆使することで結実し、世界に飛び出していく日もそう遠くはない。
3Dスキャナー・プリンター
ハンドメイド家具もOK
3Dスキャナーは現実世界の物体を3Dに落とし込む機械。いろいろな角度からCTスキャンのように撮影すると3Dデータを復元することができ、3Dプリンターでデータを立体的なものに変換できます。熊本県からライセンスを取った「くまモン」のキーホルダーを作成していました。3Dプリンターで複製したお面や、3Dデータを取得して作成した、標高を反映した熊本県の市町村地図パズルもあります。
簡単なものだと、ハンドメイド家具がつくれたり、特殊なフィラメントを使った靴などもプリントできたりします。人工関節をオーダーメイドで作ることもできるかもしれないですね。まずは、何かができるということを学生に体感してほしいです。


VR(仮想現実)
水害現場をリアルに体験
VRでは情報の世界を体感できるので、移動距離や危険などを無視することができます。工場訓練とか、高所訓練とかは危険を冒さずにできるので、社会的な意義があると思います。不動産の内見なども同じ体験がVRでできるのであれば、移動距離を節約できます。ちなみに、VRはCGの世界を体験することで、ARは現実の世界で、CGの情報を付加することです。
災害非難の体験への活用を考えることもできます。例えば、ハザードマップを立体化し、浸水する箇所を予測。浸水時の映像を立体化して、災害時の避難経路を体験することにより、実際に水害が発生したときにどうやって逃げるか、本当にその場にいるかのように疑似体験できる可能性があります。
また、体に不自由がある人でもVR空間では自由に動くことができます。物理的なバリアによって実現できなかった交流などもできるというのもVRの重要な働きの一つだと思います。
ドローン
高所や危険地も安全に、安く
自動制御や遠隔操作によって飛行する機体で、航空法上では「無人航空機」と呼ばれています。学内で保有しているドローンには、デジタルカメラが搭載されており、高解像度の映像撮影が可能です。SLC内で実際に操縦を体験できるほか、教員立ち会いのもとでキャンパスの空撮などにも活用しています。飛行にあたっては様々な規制があり、操縦資格の取得や粃糠疹性が必要な場合もあるため、注意が必要です。
既に空撮をはじめ、物流分野での配送補助や農業分野での農薬頒布、災害時の被害状況確認などに利用されています。無人であることから、高所点検や危険区域の飛行も安全に行え、有人飛行よりも安価に運用できるなど、幅広い用途での活用が期待されます。


ロボット
遠隔地から操作し会話に参加
お客さんが来た時に、「ようこそ県大へ」みたいな使い方をしてます。昔あったペッパー君のようなものです。ナビゲーションする時に、「落ち着いて付いて来てください」という音声を流しながら案内します。国際交流の催しでは多言語化を活用し、学校案内の補助を行いました。
技術がどのように連携すれば、私たちの生活で活用できるかを考えるきっかけになればと思います。例えば、個人の英会話をカジュアルに行っているケースもあります。身体性があるので、画面や音声だけよりは、リアルのコミュニケーションに近い状態で会話を行うことができます。外部の方や遠くに住んでいらっしゃる方は、画面からZoomに入るとロボットを操作することができるので、グループを自由に移動して会話へ参加することができます。ロボットを通して遠隔地とコミュニケーションするのも、自然なことになるかもしれません。
「面白いもの生み出して」 日比野友博 特任講師

-SPARC(地域活性化人材育成事業)の特徴を教えてください。
文部科学省のプロジェクトで、全国で6地域(山梨、信州、岐阜、山口、熊本、宮崎)が採択され、さまざまな大学が先進的な教育をしています。熊本エリアでは、県立大学と熊本大学、東海大学が連携しています。
県立大としての取り組みは「連携開設科目」です。各大学の得意な講義をお互い融通しようというもので、熊本大学からは「現代社会と半導体」の講義を、県立大からはデータサイエンスの基礎科目を提供しています。また、よりハイレベルな英語教育の提供を進めています。
-創設されたSLCの活用はいかがですか?
SLC(スマートラーニングコモンズ)は、出来るだけ先進的な機器を集めて、最先端の部屋を作ろうというモチベーションで新設されました。3Dプリンターやドローン、VR機器などの活用は、すぐは難しいかもしれませんが、ゼミなどの研究で触って、面白いものを生み出してもらったらうれしいです。
基本的に、学生から「こういうことがやりたい」という声があれば、ゼミの先生を通して利用許可しています。事務局は利用するときの窓口の役割も兼ねています。
-専門とされている「知識科学」とはどういったものですか。
知識の生み出し方、知識とは何かということを科学的にアプローチする学問です。私の専門はVRであり、知覚の仕組みやVRの仕組みを使って、いろいろなものを生み出すことになります。
【プロフィール】
1987年9月生まれ。愛知県尾張旭市出身。JAIST(北陸先端科学技術大学)で博士号取得。知識科学専攻。2024年、熊本県立大学SPARC事務局に着任。
未経験、だけど挑戦!「学びたい」を実現できる
SLC(スマートラーニングコモンズ)を拠点に活動しているのは、ゼミに配属される前に研究活動の素養を養うため発足した「うさぎラボ」の1,2年生たち。総合管理学部2年の田中理莉杏(りりあ)さんは、最先端技術を活用しながら、日々慣れない研究活動に取り組んでいます。

田中理莉杏(りりあ)
興味があることを一から実現していく
「大学に入るまでは、特別に情報技術に興味があったわけではありません」と語る田中さん。大学でプログラミングの講義を受け、情報技術の面白さに触れたことが研究を始めるきっかけとなりました。より詳しく学んでみたいと意欲が高まっていたころ、「うさぎラボ」が立ち上げられます。ゼミ配属までの期間がまだ長く、研究を行う機会がない中で、興味関心を深められるうってつけの環境でした。
田中さんが初めに着手したのは、パソコンのショートカットキーについて、遊び感覚で学べるアプリケーションの開発。気になったショートカットキーを選択すると、操作説明のトライアル動画が流れ、動画を見ながら実際に操作できるというもの。「便利な機能を日常的により活用してもらいたい」という思いから制作しました。
AR機器の有効性を検証する実験も
現在はApple Vision ProというAR機器を活用し、AR機器の使用経験の差による違いを検証する実験に挑戦しています。AR機器を装着した状態で、見本となる写真を見ながらパズルを組み立てます。見本となるのは、平面画像と立体画像の2種類。「仮想空間であれば、立体画像を見た方が組み立てるのは早い」という仮説を立てて実験しました。
ところが、AR機器を使ったことがない人は、普段は平面でしか物を見ていないので、かえって時間がかかってしまうケースも。「使用したときに起こる画面酔いなども起きるようです」。それでも何回か体験すると、同じ早さでできたり、逆転して早くできたりすることもあるそうです。
仮想空間に対して不慣れな人が多い中、AR機器等による補助は実際に役立つものなのかを検証しています。
社会に還元されるアプリの開発を
作品発表会で、先生から「ぜひそのアプリを使って授業をしてみたい」とほめられ、自分のアイデアは人の役に立てるものなんだ、と自信につながったそうです。「アプリの構想から実現まで行えたことは、とても良い経験となりました」。
「自分の作りたいという気持ちだけでなく、人の役に立つものを生み出したいです。社会に還元されるものであってほしい」と田中さん。研究の将来性について前向きな展望がうかがえました。「最新機器に触れてみたい人、情報に興味がある人、やってみたいことがある人に、ぜひ参加してみてほしい」とメッセージをくれました。
