タイ便り vol.10(最終回)
文学研究科日本語日本文学専攻
博士前期課程2年 德久桃花
1年半の任期が終了し、2月27日に無事帰国しました。羽田空港に到着したのは朝の5時頃。街を歩いている人はみんなダウンジャケットを着ていて、久しぶりに冬の寒さを実感しました。
【最後のクラス】
高校1年生の最後のクラスは、日本の高校生とのオンライン交流会でした。内容は、日本の生徒から日本文化に関する発表を聞き、それに対してタイの生徒が質問するというもの。カメラが繋がってお互いの姿が見えると、歓声と拍手が沸き上がりました。
高校1年生にとっては、同年代の日本人と話す初めての機会だったので、上手く発言を引き出せるか心配していたのですが、当日は予想以上に多くの手が挙がり、時間いっぱいまで日本の生徒に質問していました。両校の生徒が笑顔で交流を楽しんでいる姿を見ることができて、とても嬉しかったです。
高校2年生、3年生の最後のクラスでは、通常の授業が終わった後に、生徒がお別れの挨拶し、感謝の気持ちを伝えてくれました。私からの挨拶の時間も取っていただいたのですが、マイクを渡された瞬間にこれまでの色んな感情が巡って涙が溢れてしまいました。(笑)。
海外に住むことも、高校生と関わることも初めてで、上手くいかなかったことも多かったですが、生徒は外国人である私を受け入れ、いつも向き合ってくれました。素直でかわいらしい生徒たちに出会えたことを、とても幸せに思います。



任地を離れた後、日本語科の同僚の先生から嬉しいニュースが届きました。今年はタイ国内の大学の日本語科に進学する生徒が過去最多となったそうです。卒業後に日本語を学び続ける生徒にとっても、日本語学習から離れる生徒にとっても、高校で日本語や日本文化について一生懸命勉強したことや、日本人と言葉を交わした経験が、彼らの今後の糧になってくれることを祈っています。
【1年半を振り返って】
帰国してから1ヵ月が経とうとしています。すでにタイ料理が恋しくなり、家でパッタイ(タイ風焼きそば)を作ったり、お土産でいただいたタイティーを淹れたりして過ごしています。
1年半の隊員生活はとても特別で、初めてのことばかりでした。今でも時々写真を眺めたり、配属先の生徒や先生にもらった手紙を読み返したりしています。楽しかったことも、つらかったことも、全て含めてかけがえのない思い出です。
タイ人がよく口にする「マイペンライ(大丈夫、気にしないで)」という言葉があります。時間に捉われすぎず、ありのままを受け入れ、周りの人と楽しく過ごす――そうした価値観に触れられたことも、貴重な経験でした。おかげで、以前よりも心にゆとりができたように思います。タイで培ったこのマイペンライの精神は、これからの私の支えになってくれそうです。


「人生なんて、きっかけひとつ」(JICA海外協力隊のキャッチコピー)
まさに、その言葉通りの1年半でした。たくさんの素敵な出会いに恵まれ、物事の見方や考え方が確実に広がりました。あのとき、勇気を出して協力隊に挑戦する道を選んで良かったです。今後は、隊員生活で学んだ知識や知見を新たな場所で還元していきたいと思います。
最後に、隊員生活を支えてくださったすべての皆様に、心より感謝申し上げます。