ホーム > 文学史の画廊 > 第三画廊


第三画廊

画本古文真宝後集/嘉永三年刊/五巻一冊のみ存

eirikomon.jpg

 本書は、前集十巻・後集十巻から成る『古文真宝』に、日本の有臺藤應が注釈を、旭輝齋が挿絵を添えた、『画本古文真宝後集』の刊本である。『古文真宝』は、一三六六年鄭本の序によれば、林以正が市場で購入した本に修訂を加えたものであり、本書も鄭本の序を巻頭に付している。外題は『画本古文真宝後集』、内題は「画集古文真宝」である。刊記から、嘉永三年正月に江戸日本橋山城屋佐兵衛、他三肆によって刊行された。表紙は、縦二二・七センチ、横一五・四センチ。原装のままであり、題箋に損傷があるため、外題が一部判読不能となっている。末尾に掲載された広告によれば、本書は六篇六冊中の初篇に当たる。但し、広告には二篇以降について「近刻」となっているが、実際に刊行されたのは初篇のみかと思われる。
 掲載写真は、「秋風辭」の挿絵である。漢の武帝が地の神である后土を祀るため、河東の汾陰に行幸した際、楼船の中で行われた宴会の様子を描いたものである。(金森)

井蛙抄/宝暦二年一月刊/六巻一冊

seiashou.jpg

 『井蛙抄』は南北朝時代の歌人・頓阿の著した歌論書である。頓阿は中世歌壇の主流を形成した二条派の代表的な歌人で、公卿歌人・二条為世の門人である。『井蛙抄』は二条家において重視された歌論書のひとつで伝本も多い。  虫食いによる損傷のために題箋から外題を読み取ることはできないが、巻首の内題には『井蛙抄巻一』とある。各館25丁前後の膳138丁の6巻1冊で、縦19.0センチ、横12.7センチである。前後表紙の表面以外は虫食いはほとんどなく、内容の状態は良好。巻末の刊記より宝暦2年1月、京都の伊勢屋庄助の出版であることがわかる。
 歌の情景が描かれた絵が多く付され、写真の絵と歌は巻1「風躰事」六百番歌合の余寒の一首である。図中の歌を以下に記す。

山さくら 咲にし日より 久かたの 雲ゐにみゆれ たきのしら糸

(今戸)

十六夜日記残月抄/文政七年刊/三巻三冊

izayoi.jpg

 本書は、小山田与清と門弟北条時鄰による『十六夜日記』の注釈書である。『十六夜日記』本文中の難解と思われる語句を抽出して注釈が試みられている。表紙は薄い朱色に白で氷割模様があり、中央の原題簽に『十六夜日記残月抄』とある。大きさは縦26.2センチ、横18.9センチ。序、跋、例言、阿仏尼の肖像絵図などがあり、例言には阿仏尼の伝記についての記述、『十六夜日記』の成立を弘安三年とする考証などがみられる。巻三末の刊記より、文政七年二月、京都出雲寺文次郎らによる刊本であることがわかる。
 写真は巻三、十四・十五丁目のもので、『十六夜日記』中の長歌が奉納された鶴岡八幡宮の図である。(奈須)

うつほ物語「俊蔭」/万治三年刊/一巻三冊

utsuho.jpg

 うつほ物語は平安中期成立の物語で、作者は未詳。清原俊陰、その娘、藤原仲忠、犬宮の四代にわたることの名手一家の繁栄と、源正頼の娘・貴宮が多くの青年貴族の求婚を退け、東宮妃となり、やがて皇位継承争いが生じる過程を描く。本研究室にはは『うつほ物語』中はじめの「俊蔭」編のみ残存。本書は横15.7センチ、縦22.3センチで、上冊24丁、中冊42丁、下冊27丁の計93丁。版元は「洛陽今出川 林和泉掾」。一冊目の一丁のみ写。
 上写真の絵は、物語冒頭俊陰が三人旅人と出会い、その三人が琴を演奏している場面である。(今戸)

【文学史の画廊】