学部長からのメッセージ
熊本県立大学環境共生学部は「環境の世紀」と位置づけられる21世紀を目前にした1999年(平成11年)4月、わが国で初めて「環境共生」を冠する学部として1学科3専攻でスタートし、2024年4月に創立25周年を迎えました。環境共生学研究科は2003年(平成15年)には修士課程を、2005年(平成17年)には博士後期課程を設置するとともに、修士課程を博士前期課程としました。
2023年度までに、2,143名の学士(環境共生学)、328名の修士(環境共生学)、48名の博士(環境共生学)を輩出してきました。卒業生・修了生は民間企業、官公庁、管理栄養士、建築士、教員、研究者など幅広く活躍しています。
開設時より、環境共生に係わる諸問題を総合的に捉え、人間活動を支える場としての豊かな自然を保全しつつ、持続的に利用し、地域住民の快適で健康な生活を確保する方策を追求し、地域の発展と人間福祉の向上をめざすことを理念として、自然環境と人間活動との共生のあり方について教育・研究を行っています。
世界はいま、急速に変わっており、貧困、紛争、気候変動、感染症など、かつてないほどの多くの課題に直面しています。これらの課題を統合的に解決し、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のために示されているのが、SDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)です。
環境共生学部は環境資源学専攻、居住環境学専攻、食健康環境学専攻の3専攻を設けています。環境資源学専攻では地域の生態系メカニズムの解明や、人間活動が生態系におよぼす影響の解析を通した自然環境と人間活動との共生のための基礎的理論について、居住環境学専攻では、「環境共生」の理念を前提とした環境への負荷軽減、人間の健康・福祉などの視点を重視する居住環境とそのシステムのあり方について、食健康環境学専攻では人と社会と自然との共生の視点から、自然環境にやさしく、地域の特性を反映した「食と健康」について教育・研究を行っています。学科という垣根をなくし、専門的かつ学際的な領域の教育・研究および地域・国際貢献活動を通じてSDGsの達成、すなわち持続可能な社会の構築に貢献します。
新型コロナウイルスパンデミックは、これまでの私たちの社会生活を一変させる事態となりました。加えて、数十年に一度といわれるような大きな自然災害も毎年のようにおこっています。未曾有の危機が突然到来するような難しい時代だからこそ、環境共生学部・研究科では持続可能な社会の構築にリーダーシップを発揮できる人材を育成していきたいと考えています。
学科紹介
環境資源学専攻Division of Environmental Resources, Department of Environmental & Symbiotic Sciences
環境資源学専攻では、教室で行う講義に加えて、現場での各種フィールドワーク、沿岸域環境、森林環境、植物生産環境に関する4つのアセスメント実習や環境分析化学実験、大気環境学実験、高分子化学実験などの科目において、環境共生にかかわる諸問題の原点である現場での実証的な作業やその実験、実習を体験し、環境問題の複雑さを学び、知識の応用能力を養います。
多数の情報処理機器を学生が自由に利用できる体制が整備されており、情報処理に関する演習科目や各実験・実習・演習科目において得られた結果を処理・分析し、レポート作成、結果発表(プレゼンテーション)する能力を養成します。さらに、環境分野においては英語によるコミュニケーションが不可欠になってきているため、ネイティブスピーカーの教員の指導により英会話のみならず環境分野での英語による海外への情報発信能力を養成します。
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目的
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環境資源学専攻では、環境問題を科学的に解明し、持続可能な対策を提案していくために必要な自然科学の基礎的知識と理解力を育み、生態系の仕組みや人間活動が環境に及ぼす影響を調査、解析、評価する能力を育成し、持続的循環型社会の創造に貢献する人材を養成します。
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取得可能な資格
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教職課程の履修により、中学校教諭一種免許状(理科・家庭)・高等学校教諭一種免許状(理科・家庭・農業)が取得できます。また、環境計量士や公害防止管理者の受験に対応しています。
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就職状況
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環境アセスメントにかかわる専門家、地域の発展を環境の面から支えていく公務員、環境のより専門的な分野を掘り下げていく研究者(大学院への進学など)、環境についての次の世代を育てていく教育者への道が拓かれています。
- 主な就職先
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官公庁(国)官公庁(県)、官公庁(市町村)、教育、製造業、運輸通信、卸小売り、医療・福祉、サービス、金融保険
居住環境学専攻Division of Human Habitats, Department of Environmental & Symbiotic Sciences
居住環境学専攻では、「地域に密着した題材を通して、従来の建築学科の枠を超える教育・研究」を行っています。 近年の社会の流れを根本から転換し、「人と自然、さまざまな人々が共に生き続ける社会」=「環境共生型社会」をめ ざす熱い心をもち、地域文化や気候風土に根差した“すまい”・建築・都市・農山村などの「環境共生型居住環境を保全・創造する知識、能力、技術を豊富に持った人材育成」をめざしています。
○新しいライフスタイルの創出を国際的視点から考える能力の養成
○少人数体制の下、実体験と現場を重視した教育
○総合力、構想力の養成
○問題の認識と解決方法を深めるための歴史を重視した教育
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目的
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居住環境学専攻では、環境への負荷軽減、人間の健康・福祉等の視点を重視する居住環境に関する実践的な教育・研究を通じ、共生型居住環境の創造に必要なデザイン、計画、調整、構築に関する多様な能力を育成し、自然と共生した人と地球にやさしい居住環境を創造できる人材を養成します。
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取得可能な資格
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一級建築士及び二級建築士の受験資格が得られます。(一級建築士は、卒業後2年以上の実務経験が必要です。)また、教職課程の履修により、中学校教諭一種免許状(理科・家庭)・高等学校教諭一種免許状(理科・家庭・農業)が取得できます。その他、卒業後取得可能な資格として、1級建築施工管理技士及び2級建築施工管理技士があります。(1級建築施工管理技士は、卒業後3年以上、2級建築施工管理技士は、卒業後1年以上の実務経験が必要です。)在学中に取得できるものは、インテリアプランナー、福祉住環境コーディネーター、インテリアコーディネーター、カラーコーディネーター検定、色彩検定、照明コンサルタントなどがあります。
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就職状況
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建築・構造・設備各関係の設計事務所、住宅・建築・不動産開発等の会社の企画・技術者、家具やインテリア製品メーカーの企画・デザイナー、建築材料・機器メーカーや流通部門でも専門スタッフなどのほか、国・都道府県をはじめ自治体の上級・専門職への道が拓かれています。大学院進学者も多数います。
- 主な就職先
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官公庁(県)、建設業、製造業、運輸通信、卸小売り、金融保険、医療・福祉、サービス
食健康環境学専攻Division of Food & Health Environmental Sciences, Department of Environmental & Symbiotic Sciences
食健康環境学専攻では、食品の機能、人体の構造と機能、栄養素の体内での代謝、食生活改善による生活習慣病の予防、疾病時の栄養管理、バイオテクノロジーと食品開発、予防、疾病時の栄養管理、バイオテクノロジーと食品開発、食品の安全性と健康、運動と健康管理、食糧生産など、食品の安全性と健康、運動と健康管理、食糧生産など、食料・健康・環境にかかわる諸問題を科学的に解明し対処するための知識と実践力を養います。また、フィールドワークや多数の実験・実習科目を通して、基礎知識を確実に身につけ、さらに応用力や創造性を高めることをめざします。
また「人と社会と自然との共生」の視点から、自然環境へやさしく、地域の環境特性を反映した「食と健康」について高度な教育・研究を行い、食と健康、食料を取り巻く環境問題、生命科学、バイオテクノロジーなど”食”を総合的かつ多面的に捉えることのできる『食のスペシャリスト』を養成しています。このほか管理栄養士養成施設として、管理栄養士を養成するだけでなく、食と健康に関する高度な知識と実践の方法を学びながら、問題解決能力と研究能力を高め、応用力のある管理栄養士の輩出をめざしています。
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目的
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食健康環境学専攻では、自然環境へやさしく、地域の環境特性を反映した「食と健康」に関する教育・研究を通じ、医療・保健・福祉・食育活動の分野で活躍する管理栄養士や、食・健康・環境分野の研究および教育に携わり、地域社会の健康増進や運動指導に係わる人材を養成します。
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取得可能な資格
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所定の科目を履修することで栄養士免許が取得でき、管理栄養士国家試験の受験資格が得られます。また、教職課程の履修により、中学校教諭一種免許状(理科・家庭)・高等学校教諭一種免許状(理科・家庭・農業)、栄養教諭一種免許状の取得ができます。食品衛生監視員・食品衛生管理者(任用資格)の取得も可能です。
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就職状況
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環境共生学部の理念のもと、「食」と「健康」、そして「環境」について学んだ卒業生は、ある特定の分野に限らず、様々な方面で活躍しています。進路は、食品・医療・健康関連企業、病院・保健所・福祉施設・小中学校などでの管理栄養士業務、行政機関(保健・福祉・食品・環境分野)、教職、栄養教諭などへの道が拓かれています。大学院進学者も多数います。
- 主な就職先
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教育、官公庁(市町村)、製造業、卸小売り、金融保険、不動産、医療・福祉、サービス
カリキュラム(教育課程)
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専門教育 | |
【教育課程編成・実施の方針】
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進級要件 卒業要件 |
進級の要件及び卒業の要件<環境共生学部> |
環境共生学部4年間の学び
自然と人間が共生していく際の諸問題を総合的に捉え、その方策を追求し、地域の発展と人間福祉の向上をめざすことを理念とし環境共生学科のもと、環境資源学専攻、居住環境学専攻および食健康環境学専攻の3専攻を設けています。
全学共通教育に加え専門科目として、学部共通教育および各学科の専門領域の教育を通して、環境共生型社会の創造に貢献する人材の育成をめざし、環境共生にかかわる諸問題と環境共生の理念を理解するため、フィールドワークを含む「導入科目」、自然科学の知識と理解力を養成する「基礎科目」ならびに各専攻の専門的な能力を養成する「展開科目」を講義、演習、実習、実験などの順次性に配慮し、体系的に配置しています。